季節によって増えるケガがあります。
秋になって運動会の時期には「肉離れ」が多くなります。
コロナの時期から運動会の規模も縮小ぎみなので、当院に来られる肉離れの患者さんも減りましたが、去年くらいから運動会も普通に開催されるようになったので今年は増えそうです…。
運動会で「肉離れ」を起こすのは、ほとんどパパですね。
良いところを見せようと頑張っちゃうんでしょうか。
気持ちは分かりますが、身体が気持ちについていけず痛めるというパターンです。
練習でがっつり練習をしているスポーツ選手よりも、普段あんまり運動しない人が急に飛んだり走ったりする方が、痛めやすいですし治りも悪いんですよね。
基礎知識として「肉離れ」のことを知っておいてもらって、予防しましょう。
「肉離れ」とはどんなものですか?
「肉離れ」とは、運動時に筋肉を伸ばした状態で急激に収縮させた時に、筋線維や筋膜、筋肉と腱の移行部に損傷を起こしたものを言います。
厳密に言えば、「筋線維断裂」、「筋膜損傷」、「筋腱移行部不全断裂」となります。
ちなみに「アキレス腱」はふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)の延長部が腱になった部分です。
ふくらはぎの上の方を痛めたら「ふくらはぎの肉離れ」ですが、下の方を痛めたら「アキレス腱断裂」になる可能性もあります。
肉離れを起こしやすい筋肉
理論的には、筋肉であればどこでも肉離れを起こしますが、どちらかと言えば下肢に多くみられます。
走ったり飛んだりする動きでは太ももの後ろの筋肉(ハムストリングス筋)にみられることが多いです。
運動会の短距離走のスタートダッシュなどで、瞬間的な力が加わって「プチン」と筋線維が切れちゃうというパターンですね。
サッカーなどキック動作では太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)にも起こりますし、骨盤周囲や股関節周囲の筋肉に起こることもあります。
野球、テニスなど、体幹を捻るアクションの多い競技では腹筋に起こることもあります。
肉離れの検査はどんなものですか?
一般的な診察では、何をしていて痛めたか?どこが痛いか?などの問診をして、圧痛の場所、筋肉をストレッチした時の痛み、収縮させた時の痛みなどを確認して調べます。(徒手的検査)
ぶつけて傷めた場合には、「打撲による筋挫傷」となります。
筋肉が断裂している状態ですから肉離れも筋挫傷も同じカテゴリーですが、内出血の程度が強いケースがあり、血液中のカルシウムが固まって「石灰化」を起こすことあるので注意が必要です。
痛みが関節に近いところの場合、筋肉が骨に付着する部分の「剥離骨折」を起こしている可能性があるためエックス線検査を行うこともあります。
筋肉などの軟部組織の状態を調べるにはMRIが良いのですが、大きな病院じゃないと出来ないことが多いため、問診と徒手検査で判断することが一般的かなと思います。
昨今では「超音波(エコー)」の機器を置いてあるところも増えているので、断裂の具合や損傷部の血腫(血の集まり具合)の把握しやすくなってきました。
肉離れの重症度
以前は、痛みが軽度でストレッチ痛がなく自動運動(自分で動かせる)が可能なものを「第1度損傷」、ストレッチ痛があり自動運動の制限があるものを「第2度損傷」、痛みが強くストレッチも自動運動も不可能なものを「第3度損傷」という分類がされていました。
近年ではMRIの普及により受傷部位の病態把握がしやすくなったため、筋線維あるいは血管損傷のみの「Ⅰ型」、筋腱移行部(特に腱膜損傷)の「Ⅱ型」、腱性部(付着部)の断裂である「Ⅲ型」という分類が使われるようになっています。
重症度の把握は、競技復帰時期の目安としても有効で、治療の進め方やリハビリの時期決定などに用いられます。
肉離れを起こした後は、どれくらいで復帰できるか?(重症度と復帰時期の目安)
上記のMRIによる重症度の分類を用いて、ある程度復帰時期の見込みが立てられます。
基本的には、安静の推奨、免荷(体重をかけないようにする)、部位によっては固定などが行なわれます。
筋肉と筋腱移行部、腱では修復能力に差があるため、復帰時期には差が出てきます。
筋線維あるいは血管損傷のみの「Ⅰ型」であれば2週間以内、筋腱移行部(特に腱膜損傷)の「Ⅱ型」であれば6~8週間程度とされています。
腱性部(付着部)の断裂である「Ⅲ型」は手術適応となることが多く、復帰まで20週はかかると見込まれています。
いずれの場合でも、単に競技復帰することだけを考えるのではなく、「再負傷の防止」を考慮してリハビリを行なう必要があります。
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